法律事務職員が知っておくべき専門用語まとめ

2024年03月18日

法律事務職員が知っておくべき専門用語を場面ごとに解説します。

民事事件(訴訟等)で頻出する用語

① 訴訟提起・申立て時点

かんかつ管轄 裁判管轄のこと。
裁判手続きは手続きの種類や内容、訴額などに応じて、どの裁判所で手続きをするかが異なります。土地管轄や事物管轄などありますが、実務上は単純に「管轄」とだけ言われるのが一般的です。
管轄違いは、時効にかかってしまったりなど大問題になることもあるので、管轄に誤りがないかよく確認し、裁判所からの電話で管轄の話をされたら復唱して確認するようにしましょう。
せいほん、ふくほん正本、副本 裁判所に訴状や申立書、主張書面を提出する場合、裁判所がコピーを用意してくれたりはしないので、裁判所用と相手方用を事前に準備の上で提出する必要があります。
裁判所用が正本、相手方用が副本です。基本は正本1、副本が相手方の人数分ですが手続きによって違うものがありますので、提出前によく確認しましょう。
ゆうけん郵券 所謂郵便切手のことですが、法律業界では郵券と呼ぶのが一般的です。
派生として提訴時に納める郵券を予納郵券、事件終結時に裁判所から返却される郵券を返納郵券と呼びます。
切手の方が一般用語ですが、法律業界では使用しないので、「郵券」に馴染むようにしましょう。
そがく訴額 訴訟物の価額の略です。訴訟物の価額を省略して「訴額」と呼ぶのが一般的です。
この訴額の金額によって、裁判所へ納める印紙の金額が決まります。間違っていた場合は還付や追納などが必要です。
追納だけなら大した手間ではありませんが、還付の場合は手数料還付の申立てをし、裁判所の決定を得て初めて還付してもらえるので、手間も時間もかかってしまいます。
いずれも事務の仕事になるので、裁判所から訴額が違うと言われたら今後の対応を意識しながら話を聞きましょう。

② 係属中(進行中)時点

きじつ(きじつうけしょ)期日(期日請書) 訴訟や調停等を行う日時のことです。単純に「期日」とだけ呼ぶのが一般的です。
基本的には初回の裁判や調停を行う日時のみ裁判所からの電話やFAXで調整して決定します。
そうして決まった期日を確かに受けたことを示すために提出する書類が「期日請書」です。期日の延期や取消が必要な事態が生じない限り、基本的に期日内(訴訟や調停の時間内)に次回の期日を決定します。
期日の管理は非常に重要です。事務所によって定められたルールがありますので、管理漏れの無いように注意しましょう。
とうべんしょ(じゅんびしょめん、しゅちょうしょめん)答弁書(準備書面、主張書面) 訴訟や調停を起こされた相手方が最初に提出する書面のことです。以降の主張を行う書面は訴訟であれば「準備書面」、調停であれば「主張書面」と呼ばれます。
これは原告被告(申立て人、相手方)いずれも共通です。原告(または申立て人)側が「第1準備(主張)書面」、被告(または相手方)が「準備(主張)書面⑴」と題するのが一般的です。
答弁書は急に訴訟提起をされた相手方が初回期日の2週間前までに提出しなければならないので、請求の趣旨に対する答弁だけを行い、具体的な主張をしないこともよくあります。こういった簡潔な答弁書は「三行答弁」などとも呼ばれます。
ぎせいちんじゅつ擬制陳述 せっかく提出した主張書面も期日内で「陳述」という手続きを踏まなければ、主張したことにならず、なかったことになってしまいます。
ただ、初回期日は原告側と裁判所の都合のみで調整されるため、被告側にとっては出廷できない日時であることもよくあります。
そういった場合に使用されるのが擬制陳述です。字のとおり、実際の出廷はせずに陳述したことにする手続きのことです。
しょしょう書証 いわゆる証拠のことです。
当事者尋問による証拠と区別するために書面による証拠は書証と呼ばれます(当事者尋問による証拠は人証と呼ばれます)。
実務上、一般に、証拠調べの対象となる文書(証拠となる文書)のことを指します。
録音や録画データがCD-R等で提出されることもありますが、これも書証と同じように扱われます。
書類の証拠だけを指すわけではないので、注意しましょう。

③終結時点

わかいちょうしょ和解調書 訴訟は全て判決で終わるわけではありません。むしろ判決までいくものの方が少ないでしょう。判決以外の終結としては「和解」と「取下げ」があります。和解で終結した場合に作成されるのが和解調書です。
ただ、書面としての正式な名称は「第●回口頭弁論調書(和解)」となっているのが一般的ですが、「和解調書」と呼ぶのが一般的です。
とりさげ取下げ 原告(申立て人)側の都合で訴訟や調停などをやめることをいいます。特に理由がなくとも可能な手続きですが、取下げたことによって問題が生じることもあるので、簡単な手続きと考えすぎない方がいいでしょう。
期日外で和解した場合に取り下げるなどの円満解決なケースでの取下げも多くあります。
※取下げには、相手の同意が必要な場合もあります。

民事執行

① 執行(債権)

さいむめいぎ債務名義 裁判所や公証役場が作成した、債権者が債務者にどのような請求権を有しているかを証明する文書のことです。
強制執行の申立てをおこなう際に必要となります。
例えば、裁判所が作成する判決や和解調書正本、公証役場作成の公正証書等があります。債務名義をそのまま使用できるものと執行分を付与しないと使用できないものがあるため、事前に準備する時には注意しましょう。
さいむしゃ と だいさんさいむしゃ債務者と第三債務者 第三債務者とは、債務者が債権を有している相手のことを指します。
例えば、債権者が債務者の預貯金を差し押さえたい場合の第三債務者は、債務者が預貯金を保有している金融機関となります。
1つの申立てで第三債務者を複数とする場合、請求債権目録の合計金額を各第三債務者ごとに振り分けることになりますが、この金額以上に取立てをすることはできないので、多くありそうなところに多く振り分ける必要があります。
とりたて取立て 債権執行の申立て後、債権者が第三債務者に対して差し押さえた債権を請求することを言います。
取立てができるのは債務者への差押命令が送達されてから1週間経過後なので、注意しましょう。

② 執行(不動産・動産)

しっこうかん執行官 各地方裁判所に所属する、裁判の執行などをおこなう職員のことです。
例えば、建物明渡執行では家財等を運び債務者を退去させ、当該物件を債権者に引渡します。
よのうきん予納金 裁判所に執行の申立てをするときに納める金員のことです。
執行官の手数料や執行の業者費用等がここから賄われます。
必ずしも納めた金額全てが使用されるわけではありませんが、高額になることもあるため、あらかじめご依頼者様からある程度の金額をお預りしておくか、すぐに用意してもらえるようにしておくと良いでしょう。
はいとう配当 不動産競売事件において、不動産の売却代金で債権の残額を賄えないかつ債権者が複数いる時におこなわれる分配のことです。
配当を受ける場合、配当要求をする必要があります。 期限が設定されているため、過ぎないように気をつけましょう。
※配当自体は債権執行でも行われる場合があります。
かいさつ(かいさつきじつ)開札(開札期日) 開札は、競売において、入札された札を開けることです。
開札期日は開札をする日のことで、入札をおこなった買取希望者の中から落札者が決まる日のことです。
この開札日の時点で競売の取り下げができなくなります。
さんてん3点セット 不動産競売物件の情報として提供される「現況調査報告書」「物件明細書」「評価書」のことです。
物件の状態や権利関係、不動産の評価が記されています。裁判所が執行官や評価人に命じ用意されるもので、ネットでも見ることができます。

③ 保全

さいばんかんめんせつ(さいけんしゃめんせつ)裁判官面接(債権者面接) 債権者と裁判官との面接のことを指します。
保全手続は債務者に知られないように迅速におこなう必要があるため、裁判官が債権者から事情等を聞き、保全の必要性や適正を確認することが目的とされています。
この面接は申立て後数日の間におこなわれることが多いため、担当弁護士と相談し、スケジュールを確保しつつ申立てをおこなうとスムーズに手続きを進めることができます。
きょうたく供託 金銭や有価証券を供託所に提出し、一定の法律上の目的を達成しようとする手続きのことです。保全の手続きでは必ずと言っていいほど出てくる手続きです。
供託は裁判所から期限が指定されるため迅速に対応すべき手続きで、費用面でご依頼者様との連携も必要となるので、あらかじめ段取り等を弁護士と打合せしておくのがよいです。
たんぽ(たんぽきん)担保(担保金) 保全手続きが不当だったことにより、債務者に不当な損害を与えた時のためのいわば保証金のことで、供託をおこなう時に供託所に提出する金銭や有価証券を指します。
ご依頼者様がいくらなら用意できるか、どのようなスケジュール感でお預りできるか等を弁護士に確認をしましょう。

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刑事事件で頻出する用語

① 起訴前

ひぎしゃ被疑者 犯罪の疑いをかけられて捜査機関による捜査の対象とされているが、まだ起訴されていない人のことです。
起訴後は「被告人」と呼びます。被疑者段階のときは事件名も「○○被疑事件」と記載します。
刑事事件は起訴前なのかどうかで使用する用語や検察庁の担当部署が変わるため、特に用語を正確に使用するようにしましょう。
刑事事件は民事事件と異なり、法律事務職員が対応する場面は少ないです。
専門家同士でのやり取りが主なため、弁護士の指示で連絡しているだけであっても、裁判所や検察庁からは手続きを理解していて当然のものとして扱われます。
オロオロすることのないように用語や流れをよく勉強しておくことが大切です。
※逮捕されていなくても(在宅事件)被疑者と言われます。
そうち送致 警察から検察庁にその刑事事件が引き継がれることを言います。
身柄事件(被疑者の身柄が警察に拘束されている(=留置所にいる))の場合、送致されると被疑者の身柄も検察庁へ移されます。在宅事件(被疑者が自宅にいる)の場合は、関係書類等のみの引継ぎになります。これを書類送検と呼びます。
送致される際、警察で送致番号が付されますが、起訴前の事件特定はこの送致番号と送致日で行います。不起訴事件の記録謄写の際など必ず必要になるものだと覚えておきましょう。
べんせん弁選 弁護人選任届の略です。
私選で刑事事件を受任した場合のみ作成します。
被疑者が弁護士に依頼したことを示す重要な書類で、弁護士人選任届を提出しないと、弁護活動はできません。弁護士が受任した際に作成し、起訴前は検察庁へ、起訴後は裁判所へ提出します。
事件処理を進める中で、法律事務職員が検察庁で閲覧謄写を申請したり、書類を受領する際にはこの弁護人選任届の写しを必ず持参しますので、事前に必ず写しを取っておきましょう。データで控えを取らない場合は複数写しを取っておくと良いでしょう。
せっけん接見 被疑者または被告人が留置または勾留されている場合に留置所や拘置所へ弁護人等が会いに行くことをいいます。
国選弁護の場合、接見日時を追って法テラスへ報告する必要があります。接見日時や回数を管理しておくと、事件終結時に法テラスへの報告に困らないので、きちんと記録しておきましょう。

② 起訴後

ひこくにん被告人 刑事事件の犯人として起訴された人のことです。
起訴された後に被疑者と呼ぶことはありません。事件名も「○○被告事件」と記載します。
こうはん公判 刑事事件の訴訟のことです。
刑事事件では「公判」と呼びます。誰でも傍聴可能な一般公開の法廷で行われます。
起訴された後、公判前なのか公判後なのかで事件記録の扱いや担当部署が異なってくるので、法律事務職員としては特にその点に注意が必要です。
P、J Pは検察官(Prosecutor)、Jは裁判官(Judge)のことです。
ここから派生して検察庁のことを「P庁」と言ったりもします。あくまで法律事務所内で使うことの多い略語なので、検察事務官や裁判所書記官との電話等のやり取りの中で使用したりはしないことが一般的です。
ちなみに弁護士はLawyerのLではなく、Bといいます。これはBengoshiの略ではなく、Barristerの略だと言われています。

家事

① 離婚系

こんぴ婚費 婚費(こんぴ)とは婚姻費用の略称で、居住費や食費、子どもの学費などの、家族の生活にかかる費用のことです。離婚の案件であればほぼ必ず話に出てくるワードになります。
せいほん・とうほん正本・謄本 正本とは、原本に基づいて作成された写しであり、原本と同一の効力があります。
謄本とは、原本の写しではありますが、原本と同一の効力はなく、原本の内容と存在と証明するものです。
強制執行の債務名義として使用できるのは正本なので、取得する時には気をつけましょう。
しょうりゃくとうほん省略謄本 調停調書の内容のうち、役所に届出をする際に必要な項目のみが記載されているものを省略謄本といいます。
例えば裁判離婚をする場合、調停調書や判決を離婚届等と共に役所に提出することになりますが、調停の場合、この省略謄本を提出することが一般的です。

② 相続系

いりゅうぶん遺留分 相続人であれば最低限取得することができる遺産のことです。
ただし兄弟姉妹には遺留分は認められません。遺言書の内容より優先されますが、遺留分を侵害された相続人は、遺産を多く取得した者に対して主張しなれば遺留分を確保できません。
遺留分の請求には時効があるので、事務としては気をつけたいポイントです。
じゅいしゃ受遺者 遺言によって財産を受け取る(遺贈される)人のことです。
一般的には法定相続人以外の受取人のことを指し、個人だけでなく、法人も含みます。
とくべつきよぶん(とくべつきよりょう)特別寄与分(特別寄与料) 被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合、相続人に対してこの特別な貢献に応じて請求できる金銭のことです。
とくべつじゅえき特別受益 相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与によって特別の利益を受けた者がいる場合における、その受けた利益のことを言います。
遺産分割の時には、この特別受益を死亡時の相続財産に戻して計算します。このことを、「特別受益を”持ち戻し”て計算する」と言います。
かんかぶんかつ/だいしょうぶんかつ/きょうゆうぶんかつ換価分割/代償分割/共有分割 換価分割:相続財産を現金化して分ける方法のことです。
代償分割:特定の相続人が相続財産を現物で取得し、その代わりに他の相続人らには金銭(代償金)を支払う方法のことです。
代償分割となり、取得した預貯金等を解約して代償金を賄う場合、定められた期限内に他の相続人に支払いをしなければならないことが多いため、スピード感が求められます。
共有分割:相続財産を相続人間で共有状態で相続する方法のことです。
例えば1つの建物の持分を相続人2人で2分の1ずつの割合で取得する等。
のちのちトラブルになる可能性があるので、あまり選択されることはありません。

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