日本の弁護士市場の現状について

2022年10月12日

グラフ

これから独立して法律事務所を設立する、または既に法律事務所を設立しておりさらに事務所を大きくしたい場合に頭に入れておくべきなのが、日本の弁護士市場の現状についてです。
弁護士市場の現状を知ることで今後の市場の動きが見えてくるかと思います。
弁護士市場の現状について、裁判所の統計として「司法統計」、日弁連の統計として「基礎的な統計情報」がそれぞれ公表しています。
これらの統計情報をもとに、日本の弁護士市場の現状について見ていきましょう。

弁護士数について

まず、弁護士の人数がどうなっているか確認しましょう。
2023年3月31日時点で弁護士は44,916人、女性の弁護士は8,901人です。

弁護士の数の増加

弁護士の数がどれくらい増加しているか、過去の弁護士の数と比べてみましょう。
1955年から5年間隔で弁護士の数と女性弁護士の数を比較すると次のようになります。

弁護士の数 女性の弁護士の数
1955 5,899 11
1960 6,321 42
1965 7,082 86
1970 8,478 180
1975 10,115 303
1980 11,441 420
1985 12,064 590
1990 13,800 766
1995 15,108 996
2000 17,126 1,530
2005 20,224 2,448
2010 28,789 4,660
2015 36,415 6,618
2020 42,164 8,017
2022 44,101 8,630
2023(9月1日時点) 44,916 8,901

司法制度改革に基づいて現在の司法試験が実施されたのは2006年5月で、この年以降の弁護士数の増加が著しいといえます。

弁護士の男女別年齢構成

弁護士の男女別年齢については次の通りとなっています。(2023年3月31日時点)

年齢 男性 女性
80歳以上 1,622 116
70~79歳 3,741 260
60~69歳 3,540 497
50~59歳 4,695 1,307
40~49歳 9,875 2,988
30~39歳 9,751 2,853
20~29歳 2,791 880

男女ともに30代・40代が多いですが、60歳を超えても現役で働いている弁護士もいます。

所属弁護士会

どの地域にそれだけ弁護士がいるかについては、次のようなデータが参考になります。(2023年3月31日時点)

弁護士の所在地 人数 法律事務所の数
東京 9,068 7,243
第一東京 6,573
第二東京 6,461
大阪 4,923 2,138
その他 20,891 9,889
合計 44,916 19,270

約6割の弁護士・約半数の事務所が東京・大阪に集中しています。

また、こちらが都道府県別弁護士1人あたりの人口のデータです。(2023年3月31日時点)

都道府県 弁護士1人あたりの人口 弁護士の数 人口(千人)
東京 635 22,102 14,038
大阪 1,784 4,923 8,782
秋田 12,078 77 930
岩手 11,356 104 1,181
青森 10,750 112 1,204

秋田、岩手、青森は約11,000人に1人しか弁護士がいないことがわかります。

案件数について

次に、案件の数について見てみましょう。
最新のものである2021年の司法統計によると、

民事・行政事件 家事事件 少年事件 刑事事件
2017 1,529,391 1,050,185 74,756 959,458
2018 1,552,747 1,066,323 66,219 937,194
2019 1,523,343 1,091,805 57,718 885,388
2020 1,350,237 1,105,380 52,765 852,268
2021 1,373,849 1,150,372 46,978 845,307
2022 1,368,821 1,147,682 45,740 812,872

となっています。
民事・行政事件が135万件~150万件の間で横ばい、少年事件・刑事事件・家事事件は減少傾向にあります。

地方裁判所に第一審として提起された訴訟の数としては、

年度 件数
2012 161,313
2013 147,390
2014 142,487
2015 143,816
2016 148,306
2017 146,680
2018 138,444
2019 134,935
2020 133,430
2021 130,860
2022 126,664

となっており、現在のところは減少傾向です。
以上をもとに、弁護士1名あたりの民事訴訟の件数を求めると、次の通りとなります。

年度 件数(A) 弁護士の数(B) 弁護士1人あたりの案件数(A/B 四捨五入)
2012 161,313 32,088 5.0
2013 147,390 33,624 4.4
2014 142,487 35,045 4.1
2015 143,816 36,415 3.9
2016 148,306 37,680 3.9
2017 146,680 38,980 3.8
2018 138,444 40,066 3.5
2019 134,935 41,118 3.3
2020 133,430 42,164 3.2
2021 130,860 43,206 3.0
2022 126,664 44,907 2.8

弁護士1人あたりの地裁の訴訟案件数は減り続けているのが現状です。

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平均年収について

弁護士の収入について、日弁連の基本的な統計情報2023年の特集「近年の弁護士の活動実態について」(「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査2020」を元に)」から読み解いてみましょう。

弁護士の収入

「近年の弁護士の活動実態について」(「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査2020」を元に)」の中の「事業(営業等)収入及び給与収入の合計の推移・全体」によると、次のようになっています。

平均値 中央値
1980年 1,635万円 -
1990年 3,060万円 2,355万円
2000年 3,793万円 2,800万円
2010年 3,304万円 2,112万円
2014年 2,402万円 1,430万円
2018年 2,143万円 1,200万円
2020年 2,558万円 1,437万円
2023年 2,083万円 1,500万円

多少の増減はあるものの、ピークであった2000年からは平均値・中央値ともに減っています。

弁護士の受任単価

なお、弁護士の受任単価について、弁護士へのアンケートをもとに日弁連が消費者向けに発表している「市民のための弁護士報酬の目安」
(url:https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/meyasu.pdf
正誤表:https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/meyasuseigo.pdf)を見ると次のようなデータがわかります。

業務 最も多い回答 全体に締める%
法律相談(1時間) 1万円 55.7%
契約書作成(作成に2~3時間) 10万円 39.7%
2,000万円の売掛金回収

着手金
報酬金
50万円前後
200万円前後
41.5%
47.3%
交通事故(保険会社からの提示500万円:訴訟で1,000万円を回収)

着手金
報酬金
30万円前後
50万円前後
48.6%
35.4%
建物明渡し(建物の時価1,000万円 土地の時価1,500万円 賃料10万円/月)

着手金
報酬金
30万円前後
40万円前後
46.6%
41.5%
離婚(慰謝料200万円・養育費3万円/月)調停

着手金
報酬金
20万円前後
30万円前後
45.1%
36.2%
離婚訴訟

着手金
報酬金
30万円前後
30万円前後
52.7%
37.1%
不貞行為の慰謝料請求で相手と200万円で和解

着手金
報酬金
20万円前後
10万円前後
52.5%
44.3%
公正証書遺言作成 10万円前後 50.7%
遺産分割調停(遺産1億 配偶者からの依頼で約5,000万円の相続)

着手金
報酬金
50万円前後
100万円前後
41.4%
30.7%
月額顧問料 5万円 32.2%
刑事事件(被告に入院1ヶ月の重症を負わせた交通事故)

着手金
報酬金
30万円前後
30万円前後
52.1%
45.0%
不当解雇(400万円の解決金で労働者側)

着手金
報酬金
20万円前後
30万円前後
44.6%
41.3%

事務所弁護士と組織内弁護士について

弁護士資格をもって企業や官公署で働く弁護士である「組織内弁護士」の数は次の通りとなります。

年度 組織内弁護士の数
企業内弁護士 任期付き公務員
2011 587 86
2012 771 106
2013 953 120
2014 1,179 151
2015 1,442 187
2016 1,707 200
2017 1,931 198
2018 2,161 207
2019 2,418 238
2020 2,629 241
2021 2,820 252
2022 2,965 246
2023 3,184 243

特に企業内弁護士が年間150人~250人ペースで増加しています。
企業内弁護士が増えた背景には、規制緩和やグローバル化に基づく法務リスクの拡大や、弁護士人口の増大によって企業内弁護士としてのキャリアを積極的に選択する弁護士が増えたことも要因と考えられます。
企業内弁護士が増えることで、今まで顧問弁護士として依頼を受けていた事務所の仕事が企業内弁護士に置き換わるという可能性があります。

今後の弁護士市場について

弁護士市場については、

  • 弁護士の数はこのまま増え続ける
  • 訴訟に関する案件数は下がり続ける

という傾向にあります。
案件獲得のための競争はますます激化することが予測されます。

一部の事務所では既にwebを使ってのマーケティングで案件を獲得しております。
従来のweb広告やSEOといった方法だけではなく、YouTube動画やTikTokなどのショート動画を活用するなどで、集客方法がさらに多様化していくことが予想できます。
また、多くの案件を受任する事務所では、業務管理ツールを使うことで効率的に事務所運営を進め、パラリーガルの活用、業務効率の向上、顧客満足度の向上を行っています。
今後はさらに、事務所を運営する適切な方法を考えていく必要があるといえるでしょう。

まとめ

このページでは、日本の弁護士市場の現状についてお伝えしました。
弁護士市場では今後、弁護士が増え続けることが予測されます。
弁護士が増えることで案件の取り合いが激化し、弁護士の案件単価が下がってしまう可能性があります。
単価が下がった場合には、今まで以上に多くの案件を抱えることで売り上げを確保することも視野に入れるべきでしょう。
多くの案件を抱える場合には1案件にかかる時間を短縮するために事務所運営の効率化にも力を入れる必要があります。
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まずは資料ダウンロードをご検討してみてはいかがでしょうか。

参照
https://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/search
https://www.nichibenren.or.jp/document/statistics.html https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/1-1-1.pdf https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/1-1-3.pdf https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/1-2-1.pdf https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/669/012669.pdf https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/671/012671.pdf https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/672/012672.pdf https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/670/012670.pdf https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/3-1-1.pdf https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/5-4.pdf https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/4-2.pdf https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/4-4.pdf

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