法律事務所で請負う案件の種類別ごとの統計情報

2022年09月07日

法律

法律事務所で請負う弁護士業務には様々な種類があります。
これら法律事務所で請負う案件はどのくらいあるのか、どのくらい増えている・減っているのでしょうか。
このページでは、法律事務所で請負う案件の種類別ごとの統計情報についてお伝えします。

法律事務所が請負う案件の統計情報

法律事務所が請負う案件についての統計情報を見るために、裁判所が発表している司法統計の数字を読み解いてみましょう。

民事事件全体の数

まず、民事事件全体の数は次のようになっています。

民事第一審通常訴訟事件(地方裁判所)
新受 既済 未済
2012 161,313 168,229 98,159
2013 147,390 149,930 95,619
2014 142,488 141,008 97,099
2015 143,817 140,973 99,943
2016 148,307 148,023 100,227
2017 146,681 145,983 100,924
2018 138,444 138,683 100,685
2019 134,935 131,559 104,061
2020 133,430 122,763 114,728
2021 130,861 139,020 106,569
2022 126,664 131,794 101,439

(司法統計より)

民事事件の案件の数だけを見ると、2010年に比べて約9万件近く減っています。
これには、いわゆる過払い金ブームの終焉が大きく関係していると考えられます。
2010年当時は、過払い金ブームの真っ只中で、民事事件の多くが過払い金請求訴訟でした。
2010年6月の改正出資法の施行によって、以後は過払い金が発生しなくなったため、過払い金請求訴訟が減り、全体の総数が減っています。
全体の件数と、過払い金・過払い金以外の総数の関係を確認しましょう。

新受件数
全体 過払い金(過払い金以外)
2012 161,313 68,851(92,462)
2013 147,390 57,528(89,862)
2014 142,487 51,948(90,540)
2015 143,816 50,980(92,837)
2016 148,306 47,360(100,947)
2017 146,680 43,419(103,262)
2018 138,444 38,635(99,809)
2019 134,935 38,807(96,128)
2020 133,427 36,677(96,750)
2021 130,861 35,453(95,408)
2022 126,664 32,620(94,044)

(日弁連 弁護士白書 https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/3-1-1.pdf

過払い金請求は2012年の1/2程度となっており、その分全体の件数も減っています。
一方で、過払い金請求以外の分野については、約9万件~10万件程度でほぼ横ばいといえるでしょう。

破産・民事再生

破産・民事再生の数はどうなっているのでしょうか。

破産 小規模個人再生 給与所得者等再生
2011 110,451 13,108 1,154
2012 92,555 9,096 925
2013 81,136 7,655 719
2014 73,370 6,982 686
2015 71,533 7,798 679
2016 71,840 8,841 761
2017 76,015 10,488 796
2018 80,012 12,355 856
2019 80,202 12,764 830
2020 78,104 12,064 777

2010年6月に総量規制が始まり、借金の額が減りましたので、これに伴い支払不能となるケースが減って自己破産の件数は少なくなったと考えられます。
一方で個人再生は増加傾向でしたが、2020年は減少に転じています。
任意整理について統計は存在しませんが、150万件から250万件にも及ぶとされています。

労働審判

労働事件の参考になるのが労働審判の件数の増減です。

労働審判の総数 金銭を目的とするもの 金銭を目的としないもの
2010 3,127 - -
2012 3,358 - -
2014 3,254 - -
2016 3,392 - -
2018 3,630 2,067 1,563
2019 3,665 2,034 1,631
2020 3,907 1,992 1,915
2021 3,609 1,791 1,818
2022 3,208 1,522 1,686

(※司法統計 民事・行政 令和2年度 民事・行政事件数  事件の種類及び新受,既済,未済  最高裁判所 ・ 弁護士白書 第2編弁護士の活動状況 2-2-1民事事件 11労働審判事件より
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/3-1-8.pdf

2020年は前年比300件弱の増加となっているのですが、その多くが金銭を目的とするもの以外の解雇等を巡る労働審判となっており、2019年12月に端を発したコロナ禍が影響している可能性があります。

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離婚

離婚分野については、夫婦関係調整調停の件数が参考となります。

件数(弁護士が関与している率・数)
2014年 47,632(41.8% 19,899)
2016年 46,496(46.3% 21,512)
2018年 43,286(51.7% 22,388)
2020年 38,601(56% 21,621)
2022年 36,948(60.1% 22,207)

(弁護士白書 弁護士の活動状況2-2-4 家事事件
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/3-4-2.pdf

案件自体は減っているのですが、弁護士が関与するパーセンテージが増えた結果、弁護士が関与している件数は増加しています。
※弁護士が関与している=一方または双方に弁護士がついたもの

また、9割が離婚を目的とする訴えである人事訴訟事件の内訳は次のようになっています。

件数 弁護士が関与している割合
2006 10,706 93.0%
2007 11,037 93.1%
2008 10,863 93.6%
2009 10,552 94.7%
2010 10,816 94.7%
2011 10,583 95.2%
2012 11,840 94.9%
2013 10,873 95.6%
2014 10,231 95.6%
2015 10,365 95.5%
2016 9,950 98.1%
2017 9,973 97.8%
2018 9,477 98.1%
2019 8,829 97.7%
2020 8,157 98.0%
2021 9,173 97.9%
2022 9,174 98.3%

(弁護士白書 弁護士の活動状況2-2-4 家事事件
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/3-4-2.pdf

相続

相続関係については遺産分割調停事件の件数を参考にしてみましょう。

件数 弁護士が関与する割合
1997 8,095 68.6%
2002 9,148 62.8%
2007 9,800 60.8%
2012 11,737 65.1%
2017 12,166 78.6%
2022 12,981 80.9%

弁護士白書 4.家事事件 遺産分割調停事件における代理人弁護士の関与状況 (https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2023/3-4-4.pdf

2010年以降は1万件を超えており、かつ弁護士が関与する割合が80%に迫っています。

成年後見等

成年後見については、後見・保佐・補助開始の審判・任意後見人選任の審判の件数が参考になります。

後見開始 保佐開始 補助開始 任意後見監督人選任
2012 28,472 4,268 1,264 685
2013 28,040 4,510 1,282 716
2014 27,515 4,806 1,314 738
2015 27,521 5,085 1,360 816
2016 26,836 5,325 1,297 791
2017 27,798 5,758 1,377 804
2018 27,989 6,297 1,499 764
2019 26,476 6,745 1,990 748
2020 26,376 7,530 2,600 738
2021 28,052 8,178 2,795 784
2022 27,988 8,200 2,652 879

(弁護士白書 成年後見関係事件数と弁護士の関与状況等 )

成年後見開始の数は毎年24,000件~28,000件程度ですが、保佐や補助の開始が増加傾向にあり、本人の状態に合わせたきめ細かなサポートがされていると考えられます。

交通事故

交通事故の発生件数を死者数と一緒に確認しましょう。

交通事故の件数 死者の数 負傷者の数
2012 665,157 4,438 825,392
2013 629,033 4,388 781,492
2014 573,842 4,113 711,374
2015 536,899 4,117 666,023
2016 499,201 3,904 618,853
2017 472,165 3,694 580,850
2018 430,601 3,532 525,846
2019 381,237 3,215 461,775
2020 309,178 2,839 369,476
2021 305,425 2,636 361,768
2022 300,839 2,610 356,601

(警視庁 統計表 より https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00130002&tstat=000001027457&cycle=7&year=20220&month=0

交通事故の件数・死者・負傷者の数は減少しています。
高齢者の免許返納や、あおり運転など、交通事故の要因となる事象に対する啓蒙やエアバック・自動ブレーキシステムのような自動車の安全技術の進歩が影響しているのでしょうか。

今後のどのような案件が増えていくのか

では、今後はどのような案件が増えるのでしょうか。

インターネットでの誹謗中傷の開示請求

インターネットでの誹謗中傷の開示請求案件等の増加が予想されます。
昨今はスマートフォンの普及によってインターネット・SNSの利用が浸透した昨今は、かつてのように2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)のような匿名掲示板のみならず、SNSを利用した誹謗中傷が問題になっています。
2020年にインターネットでの誹謗中傷を苦にして自殺した女子プロレスラー木村花さんの事件では、中傷をした男性が侮辱罪で科料9,000円でしたが刑事事件化し、侮辱罪は厳罰化されました。
また、ブロガーはあちゅうさんがSNS上の誹謗中傷に対して、開示請求や損害賠償を行っていることが報道されており、誹謗中傷に対して法的手続きをとる人の増加が予想されます。
誹謗中傷や風評被害対策の案件は今後増加していく案件の一つだと考えられます。

相続

団塊の世代が相続を迎えており、相続に関する紛争の件数の増加が予想されます。
これに伴い、生前対策(遺言など)や、紛争が起こっていないものについての各種手続きについても弁護士に依頼するという流れが予想されます。

労働案件

コロナ禍で収益状態が悪くなった企業が多数あり、会社の退職にあたって法的問題を抱える人が増えることが予想されます。
解雇・残業代請求については労働者側と使用者側、ともに増えることが予想されます。
また、退職に関連して、使用者側としては問題社員対応や、労働者側としては退職代行に関するものが増加する可能性があります。

まとめ

このページでは、弁護士が請負う案件についての統計情報についてお伝えしました。
案件が減ってきている状況でも、業務効率化をすることによって、少ない人数で運用することができる可能性もあります。
業務効率化には業務管理ソフトが欠かせません。
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