法律事務所の規模が大きくなってくると大変になるのが顧客管理をどのように行うかです。
いろいろな方法が考えられますが、その中に顧客管理ツールの使用という選択肢があります。
顧客管理ツールにはどのようなものがあるか、利用をするメリットや選び方のポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。
このページでは、法律事務所において利用する顧客管理ツールについてお伝えします。
法律事務所において顧客管理を適正にする意味
まず法律事務所において顧客管理を適正にする意味にはどのようなものがあるのでしょうか。
どのような顧客から依頼を受けているかを把握し利益相反を防ぐ
顧客管理を適正に行うことで、どのような顧客から依頼を受けているかを把握することができ、利益相反となる受任を防ぐことができます。
弁護士職務基本規程28条各号は利益相反となる案件の受任を禁止しています。
もし、利益相反となる案件を受任して法律事務を行うと弁護士法56条1項所定の懲戒事由となり、現実に利益相反を原因とする懲戒事例は頻繁ではないものの発生しています。
事務所の規模が大きくなってくると、共同受任という形をとってよく把握していない事件があったり、弁護士法人として案件を受けていて自分の知らない案件を法人として受任していると、どのような案件を受任しているかを把握できなくなるので、しっかりと確認した上で依頼をうける必要があります。
顧客管理を適正にしてどのような案件の依頼をうけているかを把握すれば、利益相反を防ぐことができます。
顧客との連絡・対応の抜け・漏れをなくす
顧客管理を適正に行うことで、顧客との連絡・対応についての抜け・漏れをなくすことにつながります。
もし、顧客との連絡・対応で抜け・漏れがあると様々な問題に発展してしまいます。
たとえば、弁護士が外出中に、顧客から事務所に折り返しの連絡を希望する旨の受電があり、事務員が対応したとして、この受電の内容について適切に処理がされず弁護士に伝わらないこということがあります。
事務員としては、受電した旨の内容を事務所の机の上にメモで置いていたものの、弁護士は当初事務所に戻る予定で外出したが、そのまま事務所には戻らずに自宅に直帰したような場合に、弁護士は受電があったことを次の日まで知らないということも発生します。
この受電内容がすぐの対応が必要であった場合にはトラブルになることもあります。
法律事務所の事務負担を軽減
たとえば顧問契約の請求書の送付や、本来の弁護士業務以外の業務として、年賀状・暑中見舞い・事務所のニュースレターの送付などを行っていることがあります。 顧客情報が適切に管理されていないと、送るべき相手に届かない・送ってはいけない相手に届いてしまう、などが発生する可能性があります。
法律事務所のための顧客管理ツールとは
では、法律事務所の顧客管理のための顧客管理ツールにはどのようなものがあるのでしょうか。
一般の会社でも使える顧客管理ツール
顧客管理は法律事務所に限ったものではなく、一般の会社でも必要です。
そのため、一般の会社でも使える顧客管理ツールが提供されています。
クラウド型のものである場合には、インターネットに接続していれば利用でき、顧客に関する情報や会社内での連絡のためのメッセージ管理やチャットツール・他の社員や会議室の予定などもあわせて共有できるカレンダー機能などが一体になったものです。
法律事務所に特化した顧客管理ツール
法律事務所に特化した顧客管理ツールもあります。
一般の会社とは異なり、法律事務所は裁判手続を中心に業務を考える必要があります。
そのため、法律事務所が使いやすいように特化した顧客管理ツールの利用が望ましいです。
自社で開発しているところもありますが、すでにパッケージになったクラウド型のツールを利用することが多いです。
法律事務所が顧客管理ツールを使うことで得られるメリット
ではこれらの顧客管理ツールを使うことでどのようなメリットが得られるのでしょうか。
情報が一元管理され共有することが可能
顧客管理ツールを使うと、例えば今までの顧客に関する対応履歴や、送付した書類や裁判所に提出した書類の写しをデータにしたもの、その顧客についてのスケジュールなどを一元管理することが可能です。
そして、これらは事務所の中で共有されているので、所内はもちろん、顧客とのやりとりもスムーズに進めることができます。
属人的な運用から脱却できる
顧客管理の方法が弁護士や事務員によってバラバラであったり、特定の担当者がいないと全く業務がまわらないような、属人的な運用がされていると、適切な顧客管理体制の構築が難しいです。
顧客管理ツールを使うことで、属人的な運用から脱却することが可能となり、適切な顧客管理体制の構築が可能となります。
いつでも情報にアクセスできる
弁護士は常に事務所の中にいるわけではなく、裁判所・顧客先など様々な場所を飛び回ることが多くあります。
従来どおりの紙やファイルベースで情報を管理していると、事務所の中で情報を見るしかなく裁判所や自宅に居るときに情報を確認することができません。
また、弁護士がファイルを持って外出しているときには、事務所の中にいる事務員や他の弁護士がその情報を確認することができなくなります。
クラウド型の顧客管理ツールを利用することで、インターネットにつながっていれば一元化された情報にアクセスすることができるので、いつでもどこでも情報を確認しながら仕事をすることが可能です。
法律事務所が顧客管理ツールを選ぶ場合のポイント
顧客管理ツールですが、実際に調べてみると様々な種類のものがあることがわかります。
これらを選ぶ際のポイントにはどのようなものがあるでしょうか。
法律事務所に特化したものを選ぶほうがよい
上述したように顧客管理ツールには、どのような会社でも使えるものもあれば、法律事務所に特化したものがあります。
1つ目のポイントは法律事務所に特化したものを選ぶことです。
現段階で法律事務所が利用するのに特化したツールは必要ないと思っても、法律事務所が大きくなってきたり、現時点で主力業務としている以外の業務を行うようになり必要となることも考えられます。
一度一般のツールで顧客管理をはじめて、事務所が大きくなった段階で別のツールを使い始めると、情報の移管などで混乱を招く恐れもあります。
最初から法律事務所に特化したものを選ぶのが望ましいといえるでしょう。
コストパフォーマンスが良いか
2つ目のポイントはコストパフォーマンスが良いかどうかです。
自社で顧客管理ツールを開発しているような法律事務所もありますが、これにはエンジニアを採用しサーバーを構築する、などイニシャルコスト・ランニングコストともに莫大にかかることになります。
クラウド型の顧客管理ツールであれば、すでに出来上がったものを利用するので、イニシャルコスト・ランニングコストともに大幅に抑えることが可能です。
事務所の規模に応じた利用ができるか
3つ目のポイントは事務所の規模に応じた利用ができるかです。
たとえば表計算ソフトエクセルでの顧客管理も考え方によっては顧客管理ツールの一種ですが、小規模な事務所であればともかく、何十人もの人が使い膨大なデータ量が入るようになると、開くのに時間がかかり、データの保存で混乱することがあります。
事務所の規模が大きくなってきたときにその顧客管理ツールがその事務所の規模に応じた利用ができるかは検討しておくべきでしょう。
クラウド型の顧客管理ツールは管理するデータ量や利用する人数によって料金を設定していますので、事務所の規模に応じた利用が可能です。
まとめ
このページでは、法律事務所における顧客管理ツールの選び方のポイントを中心にお伝えしました。
適正な顧客管理は顧客満足度を高めるために必須で、多くの法律事務所が法律事務所に特化した顧客管理ツールを使っています。
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